幾星霜人々を魅了。偶然が生んだ美の宇宙。国宝曜変天目茶碗鑑賞レポ

鑑賞

有漏路と申します。

先日、国宝 曜変天目茶碗を鑑賞しました。そのときの感想をつらつら書いていきます。

藤田美術館について

場所    :藤田美術館(大阪市都島区網島町10番32号)

展示期間  :2024年8月31日まで展示。

営業時間  :10:00~18:00

入館料   :1000円(キャッシュレス推奨。私はiDで支払い。交通系ICも可。PayPayは使えないと言われました。)

鑑賞時間目安:2時間

外観はガラス張り。

入り口入って右手にレジがありますが、そこは藤田美術館が運営しているお茶屋さんの精算レジになります。入館料の支払いはここではなく、

入り口入って真っ直ぐ行ったら黒い扉の横に係の方がいますので、そこで入館料を支払いました。

料金精算後、係の方が以下の順番で鑑賞の流れを案内してくれました。

  1. 提示されたwi-fiのQRコードを読み込みwi-fiをつなぐ
  2. 提示された藤田美術館のホームページ(以下HP)のQRコードを読み込みHPを開く
  3. HPに掲載されている展示品解説の見方を係の方が説明

藤田美術館さんはHPで展示品の解説をしています。音声ガイドもHPで聞きます。そしてスマホでの写真撮影可です。スマホの充電切れを起こさないようモバイルバッテリー、音声ガイド用にイヤホンあった方が良いです。

展示品を観る前にお手洗いは大丈夫か・荷物をロッカーに預けますかと聞かれました。場所等親切に教えてくれました。

国宝曜変天目茶碗を鑑賞した感想

万人が思い描いた姿は宇宙。そして圧倒的な美

第一印象では、この茶碗には静謐な宇宙が拡がっていると感じました。

斑文が宇宙に散在する星、兎毫のような線条紋は斑文の星の色にも、宇宙を彩る星雲にも見えます。

散在する星の大きさも大小様々、内側、外側、椀の底、あらゆるところに点在し、色も青く見えたり赤く見えたり、瑠璃色や玉虫色のような無限の色が見えます。

見る角度によって様々な色を帯びる

曜変天目に対して昔の人は何を感じていたのか、どのような思いを抱いていたのか。

室町時代、相阿弥という唐物奉行(今でいう鑑定士)が書いた伝書(今でいう教科書)、『君台観左右帳記』の「土之物」部に、以下の記述があります。

「曜変、建盞の内の無上也、世上になき物也」「万疋の物也」

曜変天目茶碗の詳しい解説や、作られた時代については、また機会があれば記事にして載せようと思っています。ここでは軽く読み流してください。

建盞とは、中国の福建省建陽県水吉鎮の窯で作られた茶碗のことです。そこでは曜変天目や、他にも油滴天目茶碗、禾目天目茶碗がつくられました。

疋とは、昔の貨幣の単位です。万疋とは実際の貨幣価値を示しているというより、とても大きな金額というニュアンスが強いでしょう。

つまり、「曜変天目は建盞のなかで価値をつけられないほど・これ以上無いほど希少で美しく、これと肩を並べられるほどのものはない」というようなニュアンスでしょうか。とにかく希少性かその美しさに対してか、最上位にランク付けされています。

また、以下のようにも書かれています。

「地いかにもくろく、こきるり、うすきるりのほしひたとあり、又き色、白色こくうすきるりなどの色々まじりてにしきのやうなるくすりもあり」

くすりとは釉薬のことです。詳しくはまた別の機会に話そうと思います。

訳すると、「瑠璃色に輝く星が黒い地に映えて光輝いている」。

江戸時代、国学者である喜多村 信節が書いた随筆、『嬉遊笑覧』にも、

「建盞の釉に斑点あるものを星建盞と云ふ。星あるにより天目と称す」とあります。

星のように見える斑紋から、当時から天目と呼ばれていたそうです。

他にも、曜変は、一説では

曜=光り輝く

変=窯変(窯で焼成中、灰の飛び散りや火の加減などで釉薬に変化が生じ、思わぬ模様等表れること)

という意味が含まれています。

とにかく、昔からいつの時代もこの茶碗を星が点在する宇宙のような茶碗と評していました。

掌サイズの茶碗に拡がる無限の空間の理由

 器を真上から見たとき、見込み(茶碗の内側)の線条紋が集中線のように見え、茶溜まり(茶碗の底)に収束しているように見えました。

線条紋が集中線のように底に向かって収束しているように見える

集中線は漫画の技法の一つで、収束した先の対象を目立たせる効果があります。収束していった先にはやはり斑紋、星が見えます。

また、この線条紋は遠近法を描く際に用いる消失点への補助線に見えます。

そう考えると、底に描かれた星の奥にも無限の空間が拡がっているようにも見えます。ずっと見ていると、この茶碗の中の空間に吸い込まれ囚われてしまいそうでした。

余談ですがこの曜変天目茶碗が作られた宗の時代、闘茶という遊びが流行していました。お茶の色や点てたお茶の泡の持ちや色で勝負していたようです。

当時のルールでは、お茶の色や泡は白が最上とされていました。

揺らめく白いお茶からかすかに見える星は星の瞬きのように見えたのか、

白い泡が弾けて斑紋の星が見えてくるさまは星の誕生のように見えたのか、

様々な光景が想像されます。

微睡みのなかでみる宇宙

突然ですが、ピンボケした写真も観てください。

見返したとき、このぼやけた写真ですら美しいと思いました。

見込み(うつわの内側)に見える青色の部分は天の川のように見えます。

そして銀の覆輪(うつわの縁)が星の軌道のように見えます。覆輪に反射した光が星のように見え、宇宙を囲むように公転しているようです。

そもそも、ピンボケは被写体に焦点が合っていない状態です。

人間の目で焦点が合っていないときはどういう場合か。起床直後や疲れ目など色々ありますが、夜眠る直前も視界がぼやけます。

この写真はまさに、眠る直前に夜空を微睡みのなかで見ているようです。

ぼやけた姿だからこそ際立つ美しさ

以前、題名を忘れてしまったのですが、以下のようなことを書いている本を読みました。

・名画はぼやけた視界で観ても構図がはっきりとわかるのが名画と言われる理由の一つ

・人気マンガのキャラクターは姿を全て黒く塗りつぶしてシルエット(輪郭だけ)の状態にしてもどのキャラなのか分かるように出来ている

名画や人気のマンガのキャラクターなど、人の心を動かす絵は色味を消して輪郭だけ、もしくはその輪郭がもはやぼやけていようが、何の絵なのかどのキャラクターなのか識別がつくそうです。

この曜変天目茶碗も同じです。どれだけぼやけた状態でも、輪郭がおぼろげになっても美しさが保たれています。美しさはどのような状況でも美しいままです。不変の美はこういう物をさす言葉だと思います。

最後

曜変天目茶碗がつくられた時代やその時代背景、

他にも「釉薬」「油滴」「禾目」「建盞」など、見慣れない文字が沢山あったと思います。

詳しく語り始めると、とても長いレポートになってしまうので今回は自分が抱いた感想のみに焦点をあててお話ししました。

また機会があれば歴史的な話ができたらと思います。

以上、有漏路(うろじ)でした。

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